くるくるかんかんかん―射鵰英雄伝―
『射鵰英雄伝 レジェンド・オブ・ヒーロー』(2017年、中、チャン・カーチュン監督)
蒙宋金のドラマ。これは絶対くるくるかんかんかんだな。(2022年2月21日投稿)
などと馬鹿にしていると、その後、結構はまって全編見終わり、リピート視聴するまでに。
レジェンド級武侠小説家金庸の作品で、ドラマ化はすでにされていたもの。今回のヒロイン黄容役李一桐、モンゴルの武将ジェベ役の杉本哲太似ほか、主人公たちの親世代を演じる楊鉄心・包惜弱夫婦、完顔洪烈、黄薬師、洪七公ら主要キャストも、あんまり出てこないがきらりと光る脇役たちも全員素晴らしく、ファンタジー風の衣装も凝っていて、セットもこだわりを感じる。そして、ひとつひとつのシーン止めて見ても絵になるくらい構図もキマっている。主題歌は前作と同じ名曲。物語はあまりに長大なためにいろいろ突っ込みどころも多々あり、このくだりいつまでやるのみたいな間延び感もあるが、人間ドラマもそれなりに見せてくれる。これはヒットしないほうがおかしいといえる作品。
5人いる最高峰の武術家の一人で、もっとも主人公たちと関係が深いキャラの洪七公は、物乞いたちの地下組織である丐幇のリーダーである。物乞いたちが集まって幇主を決める全国大会が開かれたり、独自の情報網を張り巡らせていたり、国家危急の時に立ち上がる、という設定も中国史的には面白い。天下の武術家が集まる華山論剣というのは、天下一を決める大会だが、大御所たちが久しぶりに集まって旧交を暖めるという面もあり、ある意味、中国の学会を思いだしてしまう。
個人的には、中世「肉弾バトル」はリアル志向でやってほしい派で、過剰なワイヤーアクションには否定的なのだが、そういうのは超人的な達人のみに限定されている。そういえばツイハーク監督のワンスアポンアタイムインチャイナでもカンフーの達人だけがくるくる飛んでいたのだったか。達人だらけになると全員くるくる飛んでしまうので、最初から達人だらけだと違和感しかないのかもしれない。射鵰英雄伝では、崖も建物も飛び越えるアベンジャーズばりの跳躍をするのも、「内功」を会得した人物のみだ。それができるようになる過程も描かれている。
時代設定はチンギス・カンが台頭するところから死ぬ直後くらいまでだが、襄陽の戦いが最後のステージとなり、色々おかしいところもある。さすがに回回砲は出てこないが、代わりに凧のようなものが登場する。凧はもともと中国で春秋時代に軍事目的で作られたと伝えられる。(2023年2月18日)
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